TeaTime -HAYATO-




 やわらかな春の日差しが彼女の睫毛の先で震えている。
僕はそれを眺めて、胸の中が温かくなるのを感じた。
実際には胸の奥が温かくなったというよりも、下半身が熱くなったのだけれど。
まぁ、それはとりあえずこの際置いておくことにした。
なぜなら、たった今3回戦目が終了したばかりだったからだ。
もし1時間前の僕だったら、即刻次のラウンドへと突入していたかもしれないけれど。
「隼人さん…、好き」
未来は僕の胸にそっと顔をうずめた。
この野郎、かわいい奴め!と胸の中でだけつぶやいて、僕はそっと言葉を改める。
いかん、この子は女の子じゃないか。
野郎じゃない。
このアマ、かわいい奴め!
だけど僕の口からはそんなお下品な言葉は語られない。
「かわいいね、君は」
イメージの問題だ。
彼女に本心を見せないでいることが罪になるわけではない。
むしろ見せたら逃げられるかもしれないので、やっぱりここは穏やかにいこうではないか。
僕自身、儚げな男で通っているわけだしネ!
「隼人さん…」
夢見るような目で僕を見つめる未来。
いや、そんな目で見られたら本気で4回戦突入しそうだって。
まぁ、さすがにね、そこまでやり続けるほどサルじゃないしね。
やろうと思えばやれるけどね。
いや、ちょっと疲れたしなぁ。
「じゃあ、かわいい君のために、紅茶をいれてあげようかな。のどが渇いているだろう?」
「あ、そんなこと、私が…」
「いいんだ、僕がしてあげたいんだよ。君のために、ね」
「隼人さん…」
おいおい、そのハートマークの語尾のついた声は犯罪だって。
犯すぞ、コラァ!
なんてことは言いません。
ええ、イメージの問題ですよ、要は。
僕はベッドを降りてバスローブを羽織った。
ここで羽織るのが白衣だったら、裸白衣!
やべぇ、僕ってハクイ?
ああ、最近の子はハクイとか言わないんだな、黙っとこう。
オヤジギャグは僕のイメージじゃない。
そう、大事なのはイメージなわけで。
イメージプレイも好きだけど、そこらへんは内緒にしておきましょう、神様。
とりあえず、僕はベッドルームをあとにして、キッチンへと向かった。



 キッチンでお湯を沸かしながら思うことは、どうしてこうも僕は自分を隠すのがうまいのだろうか、ということ。
昔からそうだった。
外見が優しそうに見えることが、周りの人間に僕をたいてい「優しくて穏やかな男」と見せてきた。
別にそれに便乗して女喰いまくったラッキー、ってのがあるから特に本心を暴露したりもしなかったけれど。
「隼人さん…?」
気付けばにやにやしていた僕を、キッチンの入り口から未来が不思議そうに覗き込む。
「あれ、起きられたのかい。もうすぐ紅茶が入るから、座って待っていてよ」
「あ、はい」
彼女は白いバスローブに身を包んでリビングへと歩いていく。
やべー、焦ったわ。
さすがにまじで妄想に浸ってる時とかの顔は見せられないからな。
良かった、自慰行為とかおっぱじめてなくて。
「さて、と」
誰も観客はいないのに、僕はわざわざ自分を演じながら、ティーポットとカップ、チョコレート、砂糖とミルクをトレーにのせた。
そしてゆっくりとリビングへとそれを運ぶ。


 未来はソファに座って両膝に手をのせていた。
まるで今から初体験に臨む少女のように、どこかしら緊張しているのがわかる。
いや、もう何度もやったっしょ。
だけど彼女のそういうところがかわいくてたまらない。
「お待たせ」
僕は得意の笑顔で彼女を見つめた。
それを見た彼女の表情もやわらぐ。
んー、いいねー。
ちょっと肌露出してみようかー。
思わずヌード写真専門のカメラマンにでもなった気分。
それほど、彼女の笑顔が愛しい。
僕が紅茶をカップに注ぐと彼女はちょっとかしこまる。
「なんか、申し訳ないです。いたれりつくせりで…」
えええっ、いれたりついたりぃ!?
それは得意分野ですよ!
「そんなこと気にしないで。僕が君のためにしてあげたいんだから」
心の声に気付かないでくれてありがとう、未来。
さすがにいくらなんでも『私の恋人が変態でよかった、ありがとう!』とはならないだろう、うん。
「どんなに思っても、100年も続かない恋だからね…。今日、君のために出来ることがあるのなら、それをしてあげたいんだ。駄目かな」
「そんな…」
未来は幸せそうに微笑んだ。
その微笑みを守るためなら、僕はどんな嘘でもつくだろう。
あるいはその微笑みが、軽蔑の眼差しに変わって僕を蔑んでくれる日がきてもかまわないけど。
それはそれで興奮できるしネ!



 お楽しみはこれからだ。
僕はいつまでも仮面をかぶっていられるとは思わないでくれよ?
君が絶対に逃げ出さないってわかったら、その時はどうなっても知らないからね。
先はまだまだ長い。
少しずつ、教えてあげるよ。
本当の僕を。
紅茶の中に、溶かして、ね。


ミカリさまの運営していらっしゃるSAKURA『100000HIT記念企画作品』のフリー創作を頂きました。
いや〜〜ん、未来ちゃん騙されてるよ〜ん(笑)
素敵です、隼人素敵過ぎます。惚れますね!
も〜ミカリさまの書かれる相馬先生LOVEですよ♪
うふふふふ〜♪
未来ちゃん視点の話とはまるで別人のようですね。
いつ隼人の変態っぷりが未来ちゃんにばれるのか・・・ああ、自分の事のようにドキドキです(違)

こんな素敵な作品を書かれるミカリさまのサイトはこちらです。

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