本日は晴天なり




「・・・あっ・・・んん・・・」
まだ日も沈んでいない。
西日の中の彼女は、とてもキレイだ。
言葉なんかじゃ言い表せない。
世界からここだけ切り離されたように、部屋の中には、彼女の甘い吐息だけが響いている。
「あっ!!・・・やっ、はっ・・・やだぁ」
目に涙を滲ませながら、彼女が首を激しく振った。
「何がいやなんだ・・・気持ち、いいんだろ」
俺の声も、興奮して掠れ、熱を帯びている。
彼女の吸い付くような肌に右手を這わせ、
最初は円を描くようにして、敏感な胸の突起の辺りを触る。
まだそこに触れても居ないのに、つんと硬く張ったそれに触れないように、ゆっくりと。
「やあ・・・お願い・・・焦らさないで・・・」
「焦らしてなんか、ないさ」
その時の俺は、とても意地の悪い笑顔を浮かべていただろう。
彼女はさっきからずっと、そうやって愛撫されている。
もちろん、俺にだ。
好きで、好きでどうしようもなくて。
連れ去って、そして服を脱がせた。
彼女は、全然抵抗しない。
それどころか、俺に微笑みかけてきた。
服を全部脱がせて、ベッドに座った俺の膝の間に裸の彼女を座らせる。
好きだよ。
お前のことが、誰よりも何よりも好きだ。
言葉に出さない想いを、それでも感じて欲しい。
全裸で俺の指と舌に翻弄される彼女は、本当にキレイだ。
後ろから抱きかかえるよう愛撫すると、彼女の身体は少し戦慄いた。
細い首筋に舌を這わして、舐めると彼女の香りがする。
「・・・・ああっ・・・おねが、い、堂本君・・・ここも、さ、さわってっ」
触れて欲しい胸の中心に、決して触れようとしない俺の手を
彼女が我慢できない、と自らの手で移動させた。
「お前・・・ほんとに可愛いな・・・」
俺の言葉に、とろんとした表情の定まらない目が振り返る。
唇が、キスを誘っているように、艶かしい。
たまらなくなって、噛み付くように唇を重ねながら、
彼女のご希望通りに、親指と中指で少し強めにもみし抱く。
「あああん・・・・はっ・・・・ひゃぁ」
「胸だけじゃ、イケないだろ」
言い終わる前に、空いているほうの手を彼女の太腿の間に差し込み
その付け根を練り上げる。
少し乱暴だったかもしれないが、彼女のそこはすでに甘い蜜で濡れそぼっていた。
触る前から分かっていたことだ。
彼女の入り口のあたりを、中指の腹でさする。
熱くトロトロした蜜が、俺の指を濡らし、彼女の花びらが指を飲み込もうと蠢く。
「いやらしい体だな・・・」
本当に厭らしい体。
普段は優しく、無垢で穢れをしらない。
そんな美しさをたたえている彼女が、今、俺の腕の中でこんなに乱れている。
高く微かに震える声も、全部俺のものだ。
女が俺の腕の中にいる。
信じられないくらい、嬉しい。
今すぐにでも彼女の中に入って、めちゃくちゃに犯してしまいたい。
でも、ダメだ。
そんなんじゃだめだ。
もっともっと彼女を感じさせて、乱れさせて
俺を忘れられないようにしないと。
中指にたっぷりと蜜をしみこませてから、彼女の中に侵入する。
「あああ!!やっ・・・はぁぁぁん」
「キツイな・・・こんなんじゃ、俺は入れないぞ」
指の圧迫感のためか、彼女の身体がびくんっとする。
違う、これは圧迫感なんかじゃないか
彼女の内壁が、ヒクヒクと痙攣している。
「軽く、イッた?こらえ性がないなぁ、お前」
耳元で囁き、言い終わると同時に、舌で耳たぶをなぶり、中指を動かす。
くねくねと、決して激しいわけじゃない。
曲げたり、まわしたり。
ゆっくりと、それでも確実に、彼女の感じるところを探し当てる。
彼女の反応を見ながら、ゆっくりと動かす。
「はっ・・・んん・・・」
達したばかりで、体全体が性感帯になっているのか
どう動かしても、彼女は誘うようにして腰をうねらせた。
足りない?じゃあ、もう一本いれような」
いいながら、中指に習い、人差し指も埋め込む。
きついのに、そこは2本の指を難なく受け入れた。
「やあぁぁ・・・・だめぇ。お願い、も、だめぇ」
「だめじゃないだろ・・・いいって言えよ」
「・・・・はあん、き、気持ちよすぎて、おかしくなるぅ」
白い肌は、先ほどよりもさらに紅潮し、汗ばみ、女の匂いを漂わせる。
「いいよ、おかしくなっちゃえよ。おかしくなったお前を、俺に見せてよ」
中指と人差し指を、逆の方向に動かしながら彼女の内部を広げると、
ぐじゅぐじゅと、厭らしい水音が部屋に響いた。
「あ、やあ、また・・・イッちゃ・・う・・・ああ」
俺は、彼女が絶頂に達する直前に、指を抜いた。
勢いよく抜いた指には、彼女の蜜がたっぷりとからまり
彼女のそこと、指のあいだに、粘着質の銀色の糸が伸びた。
「あ・・・やん、なんで、とめるのぉ」
イカせてと、涙目でせがまれる。
そんな目をされたら、嫌とはいえない。
本当は、2度目はもうちょっと違う風に上り詰めてもらおうと思ったのだが
「まあ・・・まだ時間はあるし・・・な」
そういって、後ろから彼女をまた抱きとめると、右手を付け根に、左手を胸に這わせた。
手で、硬くなった胸の突起を指で弾き、右手で赤く膨張した蕾を、きゅっとしごいた。
「ひゃあああん・・・・」
すでに上り詰めていた彼女が達するには、たったそれだけの動きでよかったのだ。
溢れた蜜は、すでにシーツに水溜りを作っている。
半ば意識を手放したように、呆けている彼女をベッド際の壁に凭れさせた。
俺のベッドは広くない。
っといか、狭い。
壁にぐったりと寄りかかる彼女の足は、ベッドから半分ほどでて
華奢なつま先が、宙で彷徨っている。
まだ呼吸の整わない彼女の両足首を掴んで、抱えあげると、彼女の内部まで見通せた。
「あ、やっ・・・やめて、ダメ。恥ずかしい」
「なんで、キレイだ」
抵抗しようとする彼女の手を押さえ、膝を曲げ、足を開かせる。
俺の視線は、彼女のそこに集中した。
薄い毛が、テラテラと濡れて、内側がひくひくと俺を誘う。
「ほんとに、キレイだ」
心の底からの賛辞。
男を誘う、猥らな美しさがそこにある。
そっと、唇をはわすと、これまでにない抵抗があった。
「やあ!ダメ!汚いよぉ」
彼女の両足が頭を挟み込み、両手が、俺の肩を掴んだ。
しかし、この状況で、その抵抗はほとんど無意味った。
っといより、誘っているとしか思えない。
「汚くなんかない、お前の味がする・・・うまいよ」
「あっ・・・ああん」
蕾を中心に、舌を這わせると、彼女は快感から逃げるようにして腰を引く。
逃がさない。もっともっと感じるお前をみたいんだから。
逃げようとする腰に手を回し、動きを封じる。
「ああ・・・んっ」
俺の舌の動きにあわせ、彼女が腰を動かしだした。
感じてくれている。
そう思うと、嬉しくて嬉しくて、もっと乱れて欲しくなる。
蜜は舐めても舐めても、彼女の中からあふれ出てきた。
舌先に力を込め、内部に侵入しながら、
指で一番敏感な蕾を刺激すると、すすり泣くような、喘ぎ声があがる。
もっと、もっと感じて
俺を忘れないように
俺以外の男なんて、その目に映さなくなるように
「・・・んんっ・・・はぁっ・・・・やぁぁぁ・・・」
三度目の絶頂を迎えた彼女に満足して身体を離すと
力の抜けきった彼女は、ずるずると壁からずりおちた。
その身体を優しく抱きとめて、ベッドに寝かせ、
自分の服を剥ぎ取るように脱ぎ捨てて、彼女の上に覆いかぶさる。
唇に、まぶたに、頬に、耳に、首筋にキスの雨を降らせる。
これは俺のものだ。俺だけの
嬉しそうに微笑む彼女の唇に、自分の唇を押し当てる。
柔らかく、甘い。
少し開いた唇から、舌を侵入させ、彼女の口内をむさぼった。
最初は戸惑ったようだが、次第に彼女の舌も俺に答えるように絡まってくる。
誰にも渡したくない。
酸素が足りなくなるまで、彼女の唇をむさぼる。
彼女を感じさせるつもりが、その甘い唇に酔ったのは俺のほうだった。
頭の芯が、とろんと甘美に蕩ける。
「はっ・・・ねぇ、お願い。もう私、我慢できないよ」
「ああ、俺も我慢できねぇ。お前の中に、入るぞ」
浅く乱れた呼吸。
今まで聞いた、どんな声よりも色っぽい。
自身を彼女の蕾の部分にこすりつけ、蜜をたっぷりと含ませる。
「あっ、はぁ・・・ねっ・・・頂戴・・・」
「今いく・・・」
濡れたそれを、彼女の中心に沿わせ、
俺は腰に力を入れた。
「愛してるよ・・・未来」




はい、待て!
ちょっと待て!
やめて、マジやめて。
たーーすーーーけーーーてーーーーー
乱れた呼吸。
上下する胸を押さえながら、俺は一人、自分のベッドの上にいた。
飛び起きたため、裸の上半身が、タオルケットからはみ出ている。
普段から鍛えているので、引き締まった体をしているとは思うが、最近人に見せる機会もねぇ
「だぁぁーーー!!俺のバカ!!俺のアホ!!!」
死んでしまえぇぇぇぇ!!!
頭を抱えて、叫んだ。
なんで、なんで・・・
「あんな夢みるんだーーーーーーーーーばかやろぉぉぉ」
あまりの暑さにだれて、ちょっとした昼寝のつもりが
あんな夢・・・未来を抱く夢をみるなんて。
唯一の救いは、最後まで行かなかったこと。
挿入の直前で俺の目は覚めた。
良心の呵責というやつなのか・・・
あんな未来、俺は知らない。
多分誰も知らないだろう。
未来に男がいる様子はない。
大学に入ってすぐから一緒につるんでいるが、その間も男が出来た様子はない。
俺と知り合う前に、ってのは考えられなくもないが
それならば、コウあたりから話がでそうものだ。
そう、コウから・・・・・
俺は未来が好きだ。
好きでたまらない。
だけど、コウも好きだ。
大切な親友だと思っている。
未来はコウの幼馴染で、口には出さないけど、ずっとずっと好きであっただろう女の子。
親友の想い人に片思い。
不毛だなぁ・・・俺ってば
今の関係は好きだった。
男とか女とか関係なく、友達でいられる。
コウがいて、未来が居て、おハルがいて、俺が居て。
四人でバカな話をしたりして。
それならそれでよかったんだ。
未来もコウも、二人とも好きだから。
だから、早くくっついちまえばいいのに
そうしたら、諦めもつけやすいのに
コウは行動に出さないし、未来は未来で鈍いし
いや、コウの態度は、はたから見ても未来を好きだと分かるので
やはりここは、未来の鈍さ加減に問題があるのだろう。
ああ、俺って報われない・・・
ため息をついて、膝に顔をうずめると、嫌な感触がした。
布団越しの膝の下。
足の付け根というか、なんというか・・・トランクスの中に
ぬるりとした、嫌な感触。
俺は中学生か!?高校生か!?
童貞の、チェリーボーイか!?
アホなのか!?
「・・・・・・・好きな子抱く夢みて、夢精って・・・・」
情けなさ過ぎて、なんだか泣きたい気分で立ち上がり、トランクスを脱いだ。
全裸になってしまうが、どうせ一人暮らし。
俺以外に誰もいないので、気兼ねはしない。
脱いだトランクスを洗濯かごに叩き込む。
早く洗わないと落ちにくくなるが
今はこんなもの洗う気になれない。
21にもなる男が、好きな子抱いた夢みて夢精して
その汚れたトランクスを、一人でごしごしと洗う・・・
ダメだ、考えただけで死ぬ。死ねる。
トランクスを脱いで、全裸になった俺の股間で、未だ夢の余韻から開放されない、
微妙に元気な息子がぶら下がっている。
勘弁してくださいよ、マジで
大学に入って2年。
そういや、女を抱いていない。
大学に入るまでは、俺は結構モテていた方だと思う。
高校時代なんて、彼女がいなかった時期がなかった。
俺は結構軽口を叩くので、女の子が寄って来たのだ。
女の子は大好きなので、告白されたら、よほど好みから外れている子以外は、全員OKした。
彼女が居る期間は、もちろん他の子に告白されても断った。
付き合えば、それなりに好きになれる。
全然知らなかった子でも、身近にいると好きになる。
それぞれに可愛いところがあり、女の子は俺をあきさせなかった。
でも、それだけ。
それなりに好き、は恋人の求める好きとは違うらしく、いつも半年待たずに別れた。
というか、フラれた。
そしてまた別の女の子を求める。
そんな事を繰り返していた、高校時代。
そして大学に入って、初めて未来と出会った。
出合った頃の彼女は、どこか翳りがあり、いつも下を向いて
めったに笑ってくれなかった未来。
こんなに可愛いのにもったいない。
出来る限り、彼女に笑顔が戻るように、俺はなかなか頑張ったと思う。
未来のために
最初は友達だからだと思ってた。
でも、だんだん彼女の事ばかり考えるようになり、これが恋なんだと気づいたんだ。
親友の想い人、それなのに気持ちが止められなくて
好きってのは、こういう気持ちなんだなぁと初めて気づいた。
気づいてから、高校時代の自分が相当に不誠実な男だったのだと
深く反省もしたものだ。
気持ちは、そう・・・だけど、身体は・・・
「なあ、欲求不満なのかね、俺は」
半立ちの息子に向って、つぶやく。
なんともやるせない、情けない。
「はぁーーーーーーー・・・・・・・・」
深く長いため息をついて、タンスに向う。
新しいトランクスと、シャツとジーンズ。
それにバスタオルを取り出して
トランクスとタオルだけを手に取り、残りはベッドに投げた。
とりあえず、まあ・・・冷たいシャワーでも浴びてスッキリしよう。




ピンポーン、ピンポーン
シャワーを浴びている途中で、呼び鈴がなる。
いつまでも抜けきれない、熱を帯びた体を冷水に当てること5分
風呂入る前に尋ねてこいよ!
誰だけ知らないけど、俺は今忙しい!
ピンポーン
無視しようかと思ったが、まだしつこくなっている音に
シャワーを止めて、バスルームのドアを開けた。
「今風呂はいってんだけどー誰ー?」
顔だけドアからだして、玄関の方に向ける。
あまり上等とはいえない、安アパートの1ルーム
それだけでも、ドアの外に声を伝えることは可能だろう。
『あ、あの未来です。あのごめん、出直すね』
ドア越しに聴こえる、くぐもった声は
意外にも、未来だった。
「え、未来?待て待て。すぐ出るから、ちょっと待て」
未来がうちに尋ねてくるなんて、めったにない。
何かあったんだろうか。
言い終わる前に、タオルをとり身体を拭く。
丁寧に、なんてやってられない。
まだ雫の滴る身体に、トランクスを装着して、ジーンズに足を通す。
シャツは、まだ体が濡れているので、乾いてからきることにする。
今はとりあえず、早く玄関に行かなくては!
濡れた髪を、バスタオルでガシガシ拭きながら玄関を開けた。
この間、約1分。
愛の力は偉大であると、自嘲的に思った。
「ごめん、待たせた。で、どうした?」
「あ、あの、ごめんなさい。大丈夫?」
半裸の俺にびっくりしたのか、未来は真っ赤になって俺から目をそらした。
やっぱり、上着をきればよかった・・・
「大丈夫だけど、めずらしいな。どうした」
平静を装いつつ、さっき見た夢が脳裏によぎる。
こらぁ!息子!落ち着け!
いかんよ、俺・・・今日は理性がなさげだよ。
「春子から頼まれたの、これ渡してって。今日渡す約束だったの忘れてたって」
右手に持っている紙袋を受け取ると、中には参考書が3冊
授業で分からないところがある、と話したら、分かりやすい参考書を持っているからと
借りる約束をしていたのを思い出した。
「あーそういや、今日借りるって話だったっけ・・・で、おハルは?」
「なんか、部員が怪我して、病院に付き添わなきゃいけないらしくて・・・
それで、課題で使うって話しだったから・・・早く持って行った方がいいって頼まれたの・・・
・・・もしかして、忘れてた?」
「はい、ごめんなさい。忘れてました」
素直に頭を下げると、未来はぶぅっと頬を膨らませた。
「もぉーわざわざ暑い中きたのにー」
「ごめんなさい、すみません。ありがとうございました」
膨れた顔も可愛い。
ダメ、俺ってばメロメロだ。
このままじゃ、マジで理性が持ちません。
「ありがと、じゃあ・・・」
といって、閉めようとしたドアに、未来が手をかけた。
「ひどいーー、このまま帰すつもり?」
「は?」
「お茶くらい飲ませてよー。本当に喉がからからなの」
俺は、お前が欲しくて身体がカラカラです。
とは、口が裂けてもいえません。
「あーでも、麦茶くらいしかないぞ。外行くか?」
「それでもいいよ〜ここらへんって、お店ないじゃない。
もう炎天下の中歩くのなんていや〜」
拗ねたような口調。
少しずつ俺に心を開いてきているのか、徐々に我が儘も言うようになった未来。
それが凄く嬉しい。
んな事を考えてしまう自分が、かわいらしいやら、悲しいやら・・・涙がでちゃうよ。
「はいはい、わかりました。お姫様、どうぞお入りください」
「わーい。お邪魔します」
「言っとくけど、うちにエアコンなんてものないぞ。扇風機と麦茶で我慢しろよ」
ドアを押さえる俺の脇を、すり抜けるようにして室内にはいる。
長い髪が風に舞い、微かにシャンプーの良い香りがした。
そして俺は、その時、初めて未来の格好をまともに目にした。
青いレースのついた可愛いキャミソールに
柔らかく軽そうな素材の、白い膝丈のスカート
扇風機の前にたつと、スカートが風にふわふわと揺れる。
大丈夫なのか!?俺の理性は大丈夫なのか!?
いや、がんばれ堂本広!
開放的な夏にも負けない、理性の男を貫くのだ!
心にそう誓ってから、玄関のドアを閉める。
無用心だからと、いつもはすぐに鍵をかけるのだが
なんだかためらってしまって、迷った挙句かけるのをやめた。
扇風機の前で涼んでいる未来を、なるべく見ないようにして冷蔵庫を開ける。
ホントに麦茶しかないよ、我が家ったら
麦茶をとりだし、グラスを二個テーブルにおく。
カランカランと氷を3つずついれて、麦茶を注ぐと、ポコポと涼しげな音を立てた。
「いただきまーす」
一気に麦茶をあおる未来の、その白い喉元から目が離せない。
麦茶を流し込む、その動きでさえも艶かしく見えた。
ねえ、未来さん。
いくら俺を男と思っていなくったって
そんな格好で、男の一人暮らしの部屋に入ってきたら、誘ってると思われますよ。
心の中の叫びが、きかれるはずもなく。
「ぷっはーーおいしーー」
「ビールを飲むおやじか、お前は」
「う、うるさいなぁ、ホントに美味しかったんだから仕方ないじゃない」
頬を赤く染めて、口を尖らす未来。
その唇は、どんなに甘いのだろう。
きっと夢なんかとは比べ物にならない。
なんだか、寝転がって蹲って泣いてしまいたい。
俺ってば、根暗な男だったのね。
「そういえば、この後どこかいくの?」
「いや、なんで?」
「シャワー浴びてたから、出かける準備かと思って・・・邪魔しちゃった?」
喉の渇きが潤って、やっと余裕が出てきたのか、未来は済まさそうな視線を送ってくる。
上目遣いは、卑怯です!卑怯ですよ!立花さん!
どぎまぎしているのを悟られまいと、わざと噴出すように笑って
未来の頭に、ぽんぽんっと手を載せた。
「昼寝してたら汗かいてさ、さっぱりしたかっただけ。
今日はバイトも休みだし、のんびりしたもんよ」
未来は無邪気にも、俺のその言葉に嬉しそうに顔を綻ばせると、少し考えてから口を開く
「あのね、じゃあ、この後私と映画にいかない?」
「おや、デートのお誘い」
冗談めかした言葉に、どんな反応を示すかと思いきや
「そう、デートしよ。スラングが沢山使われてる映画らしいんだけど
訳の勉強にもなるし、話も面白いらしいの」
さらっと、流されてしまいましたよ。
はい、決定。
本当にコイツ、俺を男と思ってねぇ
「お前ねぇ、そういうのは好きな男に言えよ。そんなんだから
いつまでたっても、彼氏の一人も出来ないんだぞ」
「ううううーーーーー」
俺の気持ちも分かっていない未来は、悔しそうに口を尖らせた。
「・・・・お前さ、コウの事どう思ってんの?」
早く、くっついてくれよ、マジで
「え?コウ君?幼馴染よ・・・コウ君がどうかしたの?」
俺としては、ごくごく自然な会話の流れだったのだが
未来には、何故そこでコウの名前がでるのかさっぱり分からないらしい。
こいつは、破滅的に可愛いが、それ以上に鈍感で罪作りだ。
「コウがお前の事好きってのは、わかってるんだからさ
お前も、コウの事嫌いじゃないだろ?」
コウは良い奴だから、きっとお前を幸せにしてくれるだろう。
コウなら、俺だって安心だ。
「そんなの分からないじゃない・・・私、コウ君からきいたわけじゃないもん」
「ほう、じゃあ、コウに告白されたらどうするよ」
「え・・・それは・・・」
『付き合うかも』とか、軽く答えるかな、と思っていたのに
意外にも未来は、悲しげに目を伏せた。
「コウ君は、幼馴染だもん・・・そんなのわかんないよ・・・」
ジーザス。
コウも報われないのか・・・幼馴染ってのは、なかなか難しいらしい。
「じゃあ、他に好きな奴でもいんの?」
自分で言っておいて、ちょっと動揺した。
自分の名前がでるはずはないけど、期待してしまう。
それ以上に、他の男の名前がでるかもしれないと言う恐怖も感じた。
「・・・好き・・・なのかな・・・わかんない」
考え込む未来の言葉。
でも、きっと誰か特定の奴を思い浮かべているんだろう。
どこの誰だかわからないやつに、俺の嫉妬心は膨れ上がる。
ああ、神様。
いっそ誰かにコイツをとられる前に、俺を殺してくれよ。
「おこちゃまですねー未来ちゃんは〜。
仕方がないなぁ、今日のところはお兄さんが付き合ってあげましょう」
このままこの話を続けていたくなくて、俺は立ち上がる。
まだシャツを着ていないことを思い出し、シャツを着て、財布と携帯を持って、靴下を履く。
ぱっぱっと手早く準備をすませてから、未来に向き直った。
「ほら、行くぞ。何時からだ」
俺の言葉に、未来は満面の笑顔で立ち上がる。
あ〜あ、このまま抱きしめてしまいたい。
胸を焦がす衝動を抑え、ため息をつく。
俺は理性の男。堂本広!
いつかこいつを任せても良いって、そう思える男が現れるまで
こいつがその男と幸せになる日まで
俺がこいつを守ってやろう。
幸せだけど・・・つらいなぁ
「あ〜あ。俺ってば良い奴」
「映画、嫌?」
「違います。俺は今日はお姫様の護衛役ですので、何なりとお申し付けください」
勘違いして不安そうな未来の頭を、冗談を言いながら撫でる。
安心した未来の笑顔。
守ってやらなきゃな・・・
ほんと、俺って良い奴だよ。
そんでちょっと憐れだ。
まだ外は暑い。
それでも柔らかくなった太陽の光が、晴れた空を照らしていた。
本日は晴天なり!
俺の心と違ってね・・・・




【了】
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◆◆◆◆◆◆◆◆一言◆◆◆◆◆◆◆◆

艶がないです・・・(涙)
初めて書いたHシーン・・・艶がなさ過ぎますです(泣)
なんか淡々と語ってるだけになってしまった。
精進します(--)







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