Web拍手ありがとうシリーズ第一弾
「ピアス」シリーズ
篠原達也の場合
「未来には、これが似合うよ」
それは偶然だった。
大学の帰り道、一軒の雑貨屋の前でピアスを見ている彼女を見つけた。
気づかれないように、そっと足音を忍ばせて
真後ろにたって、耳元で囁く。
「し、篠原くん!びっくりした」
予想通りの反応をしてくれた未来に、ぼくは微笑んだ。
相変わらず擦れてないというか、単純というか。
まあ、そんなところも気に入っているんだけど。
「これ、似合うと思うな」
店先に並べてあったピアスの中から、ひとつを手に取る。
細長いチェーンの下のほうに、水色のティアドロップ型の石が付いている。
きっと彼女の動きに合わせて、可愛く揺れるだろう。
「水色かー確かに今から夏だしね。可愛いかも」
未来は満面の笑顔でそれを受け取った。
「ああでも・・・やっぱりやめた方がいいか」
ふっと思い出すのは、未来を抱く時のこと。
「なんで?」
「邪魔だから」
「なんで邪魔なの?」
「・・・わからない?」
ぼくの言葉に、未来は首をかしげる。
どうやら実地で教えてほしいらしい。
ちょっとした悪戯心が頭をもたげる。
未来の手からピアスを取り戻して、反対の手で頬に触れながら髪を上げた。
そして、ピアスを耳にあてる。
「ほら、こんなに大きいと、未来の耳にふれられない」
耳元で囁くと、未来は顔を真っ赤にして俯いた。
「もーーえっち!」
小声で抗議するが、それは余計にぼくの加虐心を刺激する。
「こんなぼくは嫌い?」
わざと吐息を耳に掠らせながらしゃべると、未来の身体がぴくんと震えた。
「そ・・・そんな事ないけど・・・」
恥ずかしいのか、感じてしまったのか
未来はさらに顔を伏せる。
「やっぱり、これ買おう」
ひとつ面白い考えが浮かんだので、ぼくはピアスを持って中へ向う。
「な、どうしたの?」
「これ、つけてよ。それで、君がぼくを欲しくなった時にぼくの前で外して。
それが合図」
後を付いて来た未来の腰に手を回して、耳元で囁いた。
「えええええーーーー!!」
告げられた内容に、真っ赤になりながら抗議の声を上げるが
そんなさまも可愛いものだった。
「君が望むなら、ぼくはなんでもしてあげるって言っただろ?
約束・・・だよ」
ぼくの恥かしがり屋の恋人は、また真っ赤になって俯いてしまった。
END
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